カイシトモヤ『たのしごとデザイン論』を読んだ

たのしごとデザイン論

たのしごとデザイン論

たまには柔らかめの本を読もうと思って手に取った。大雑把に言うとデザイナーの振る舞いについてのヒントが書いてある。仕事の考え方や関係者とのコミュニケーションの仕方、それからキャリアについて。ひと通り網羅されている。これからデザイナーとしてやっていくぞという方にちょうど良いかもしれない。

著者のカイシトモヤ氏は自身のデザイン事務所を持ちながら美術大学で学生にデザインを教える立場にあるお方。

個人的には、数年実務に携わって、自分のデザイナーとしてのキャリアについて考えたいお年頃なので、5章「あなたのこれからを創る、たのしごと。」が良かった。サラッと終わってしまったのが残念ではあるが、こういう視点もあるのだなと学んだ箇所もいくつかあった。

ひとつだけ取り上げるなら、基礎研究と応用研究の話に触れておきたいところ。基礎研究と応用研究はデザインに取り組むときの態度である。

グラフィックデザインの展覧会でよく目にするなんとか賞で受賞した作品というものは、実験的なものも多く見ていて勉強になるのだけど、どのくらいこれでビジネスに貢献できるのだろうかと思ことがしばしばあった。ここを目指さないといけないのかなと悩んでいたこともあったが、この基礎研究の考え方を取り入れたらすっきりした。こういうのもあるよなというところから一歩解像度が高まった感覚。

僕の解釈では、基礎研究は新しい表現を探す行為に近くて実利とかは気にしないもので、応用研究は基礎研究をベースに商業デザインの領域で取り入れることができるように再構築されたもの。賞は基礎研究の発表の場になることが多いので、「そこでは新しい表現の研究成果も評価される」という視点を取り入れてみると、組織や数字の話は抜きにして、それが評価される場があること自体は良いことだなと改めて思ったのである。こんど展覧会に行ったときに、すこし意識的に視るモードを切り替えてみようと思った。

そのほか、5章の中には、やりたいからやるべきへ、スペシャリストかジェネラリストか、といった話が綴られている。言葉にしにくい考え方や概念もほどよく言語化されていてわかりやすい本だった。